腱板断裂とは?症状をわかりやすく解説

2024年10月29日 10:57
カテゴリ:

腱板断裂(けんばんだんれつ)は、肩の腱が部分的または完全に切れてしまう状態です。この状態により、肩にさまざまな症状が現れ、日常生活に影響を及ぼします。腱板断裂がどのような症状を引き起こすか、そして早期診断がなぜ重要なのかを見ていきましょう。

1. 肩の痛み

腱板断裂で最もよく現れる症状が「痛み」です。特に次のような場面で痛みを感じることが多いです:

• 腕を上げる動作:腕を上げると肩が痛むことが多く、特に60度から120度の角度で痛みが強まります。この症状は「ペインフルアークサイン」と呼ばれ、腱板断裂の特徴的なサインです。
• 肩の前面や側面の痛み:痛みの場所は肩の前方や横側に集中し、日常動作で肩に負荷がかかると痛みを感じやすくなります。

2. 夜間の痛み

夜、眠ろうと横になると、痛みがさらに強くなり、睡眠を妨げることがあります。この「夜間痛」は腱板断裂に特有の症状で、以下の要因が影響していると考えられます:

• 血流の変化:夜間、肩周辺の血流が変化するため、痛みが増すことがあります。
• 肩にかかる圧力:横になることで肩に負担がかかり、痛みが強まることもあります。

3. 肩の運動障害

腱板断裂が進行すると、肩を動かす力が弱まり、日常的な動作が困難になります。具体的には、以下のような行動がしづらくなることがあります:

• 腕を上げる力が入らない:腕を持ち上げようとしても力が入らず、洗髪や背中を触るなどの動作が困難になることが多いです。

4. 関節の可動域制限

腱板断裂により肩の動きが制限されることがあります。これは、肩の痛みや筋力の低下によって動きに制限がかかるためです。ただし、五十肩(肩関節周囲炎)とは異なり、肩そのものが硬くなることは少ないです。

5. 偽性麻痺

腱板断裂がさらに進行し、断裂範囲が広がると「偽性麻痺」と呼ばれる状態になることがあります。この場合、腕が自力ではほとんど上がらなくなり、まるで麻痺したかのように動かせなくなります。

腱板断裂のリスク要因

腱板断裂は特に40歳以上の男性で多く見られますが、加齢や肩を酷使するスポーツや重労働もリスクを高めます。過度に肩を使うことで腱が弱くなり、断裂しやすくなるのです。

早期診断と治療の重要性

腱板断裂の症状が見られる場合は、早めに診断を受けることが大切です。放置すると症状が悪化し、偽性麻痺などの深刻な状態に進行する可能性があります。

腱板断裂の診断方法

腱板断裂の診断には、医師がいくつかの検査を組み合わせて行います。これらの検査によって断裂の有無や範囲を詳しく調べることができます。

1. 問診と視診

最初に医師は症状についての詳細な質問を行い、痛みや運動制限がいつからあるか、どの動作で痛みが強まるかを確認します。また、肩の腫れや変形が見られる場合には、さらに詳しく調べるきっかけとなります。

2. 触診

医師が肩を実際に触って、腱板の断裂や筋肉の異常を探ります。触診により、痛みのある箇所や異常を特定することができます。

3. 画像検査

腱板断裂の確定診断には、次のような画像検査が用いられます:

• X線(レントゲン):骨の変形や肩の異常を確認するために使用されますが、腱自体は映らないため、腱板の断裂の有無までは分かりません。
• 超音波検査:腱や筋肉の状態をリアルタイムで確認できるため、断裂の場所や範囲がわかりやすくなります。
• MRI(磁気共鳴画像):腱板断裂の診断で最も有用な検査とされ、断裂の部位や範囲を正確に把握することが可能です。

腱板断裂の治療法

腱板断裂の治療法は、症状の重さや患者の生活スタイルによって異なります。一般的な治療法として、保存療法と手術療法の2つが挙げられます。

1. 保存療法

軽度の腱板断裂や部分的な断裂の場合には、保存療法での回復が見込まれます。保存療法では、痛みを抑えながら肩の機能を維持するための方法が取られます。

• 薬物療法:痛みを軽減するために、鎮痛薬や消炎薬が処方されます。
• 理学療法(リハビリ):肩周りの筋肉を強化し、動きを改善するために、ストレッチや筋力トレーニングが行われます。リハビリ専門の指導を受けることで、正しい方法で肩の動きを取り戻すことが目指されます。
• 注射治療:痛みが強い場合、肩関節内にステロイド注射が行われることもあります。これは短期的に痛みを和らげる効果があるため、日常生活が送りやすくなります。

2. 手術療法

腱板が完全に断裂している場合や、保存療法で効果が見られない場合には手術が検討されます。手術によって腱板を修復し、肩の機能を回復させることが目的です。

• 鏡視下手術(関節鏡手術):小さな切開からカメラを挿入し、断裂した腱板を縫合する方法です。傷口が小さく、回復も比較的早いのが特徴です。
• 開放手術:より大きな切開をして、断裂した腱板をしっかりと修復する方法です。広範囲の断裂や重度の症例で行われることが多く、回復には時間がかかりますが、長期的な効果が期待されます。

リハビリと再発予防

手術後や保存療法後には、リハビリを通じて肩の機能をしっかりと回復させることが重要です。また、腱板断裂は再発するリスクもあるため、リハビリと日常生活での肩のケアが欠かせません。

1. リハビリの流れ

• 初期段階:痛みや腫れが治まるまで、肩に負担をかけないように安静にします。
• 中期段階:医師や理学療法士の指導のもと、徐々に肩の動きを増やしていきます。軽いストレッチや可動域を広げる運動が行われます。
• 後期段階:肩の筋力を強化するためのトレーニングを行い、日常生活に必要な動作がスムーズにできるようにします。

2. 日常生活での注意点

腱板断裂の再発を防ぐため、日常生活で以下の点に注意しましょう:

• 無理な負荷をかけない:重い荷物を片手で持つなど、肩に過剰な負担をかける動作は控えましょう。
• 適切な姿勢を保つ:デスクワークや長時間の同じ姿勢は肩に負担をかけることがあるため、定期的にストレッチを行うことが大切です。
• 肩周りの筋力維持:肩の筋力を適度に保つことで、腱にかかる負担を軽減し、再発リスクを低減します。

まとめ

腱板断裂は、肩の腱が断裂することで痛みや運動障害が生じる状態です。早期の診断と治療、そして適切なリハビリによって、肩の機能をしっかりと回復させることが重要です。肩の痛みや動かしづらさを感じたら、早めに医師に相談し、症状の悪化を防ぎましょう。

記事一覧を見る